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5.1 要求事項収集

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要求事項収集プロセスは、「プロジェクト目標を達成するためにステークホルダーにニーズを定義し、文書化するプロセス」と定義されています。

目標を達成するために、スポンサーや顧客、ステークホルダーのニーズを定義し、文書化するプロセスです。
この時に文書化されるのが、「要求事項文書」で、これをもとにプロジェクト・スコープが決定されます。
このプロセスで顧客のニーズ及び要求事項を正確に定義できることが、今後のプロジェクト・スコープの安定につながり、プロジェクトの安定にもつながっていきます。

計画プロセス群は立ち上げプロセス群のアウトプットであるプロジェクト憲章と、ステークホルダー登録簿をインプットに、要求事項収集プロセスから始まります。

プロセスマップ

要求事項収集のインプット、ツールと技法、アウトプットは以下の通りです。

プロジェクト要求事項と成果物要求事項について

要求事項を「プロジェクト要求事項」「成果物要求事項」に分類することができます。
「プロジェクト要求事項」は、ビジネス要求事項、プロジェクトマネジメント要求事項、納入要求事項などがあります。
「成果物要求事項」は、技術的要求事項、セキュリティ要求事項、性能要求事項などの情報があります。

インプット

プロジェクト憲章

プロジェクト憲章には、プロジェクトに対するハイレベルの要求事項やハイレベルの成果物が記述されているため、詳細な成果物要求事項を作成するためにインプットとして利用します。

ステークホルダー登録簿

詳細なプロジェクト要求事項および成果物要求事項に関する情報が入手可能なステークホルダーを特定するために利用します。

ツールと技法

インタビュー

ステークホルダーと直接会話することで、必要な情報を見いだすために使用します。
一般的には、予定した質問と話の展開に応じた質問を行うことで、それに対する回答を記録するという方法を使用します。

フォーカス・グループ

フォーカス・グループとは、一定の条件を満たしたステークホルダーや当該分野の専門家たちを一堂に集めて、プロダクト、サービス、所産等に対する期待や意見を聞き取り調査を行う方法をいいます。

ファシリテーション型ワークショップ

ファシリテーション型ワークショップとは、成果物要求事項を定義するために、各機能部門にまたがる主要なステークホルダーを一堂にある待て行う集中的なセッションのこと。
ファシリテーションが適切に行われたセッションでは、参加者間の信頼が構築され、相互の関係性が親密になりコミュニケーションが改善されます。
それによって、ステークホルダーの合意を得る可能性が高まります。

さらにもう一つの利点として、個別のセッションよりも問題がより迅速に発見され解決される点もありますので覚えておきましょう。

グループ発想技法

プロジェクト要求事項や成果物要求事項を特定するために、以下のような技法を活用します。

ブレーンストーミング

メンバーが自由にディスカッションを行いながらアイデアを出し合う技法

ノミナル・グループ技法

ブレーンストーミングに投票プロセスを加えた技法。
ブレーンストーミングで出し合ったアイデアに優先順位や格付けを行うための技法です。

デルファイ法

質問、回答、フィードバックを繰り返していくことで合意を形成する技法。
特徴として回答者を匿名とすることで、回答者の影響を防ぎ、データの偏りを現象させることが大きな特徴です。

アイデア・マップ法やマインド・マップ法

アイデアを単一のマップにまとめて、理解の共通点や違いを明確化するための技法。

親和図

キーワードの意味合いなどからグループ化や図式化することで、ばらばらの情報やアイデアから本質を明らかにするための技法。

グループ意志決定技法

グループ意志決定技法とは、将来の行動解決策という形で、期待される結果に至る複数の代替案を査定するプロセスのこと。
成果物要求事項を洗い出し、分類し、優先順位付けを行うために使用します。
グループ全体の意志決定に至る方法には、以下のようなものがあります。

満場一致

全員が単一の行動に合意する

過半数

グループのメンバーのうち50%以上が支持する

相対多数

過半数に達しなくても、グループで最大多数の票を得た勢力が意志決定をする

独裁

一人の個人がグループに対する意志決定をする

注意点として、どの方法を使うかについては、メンバー間のコンフリクトに配慮することが重要です。
理想は、メンバー全員がWin-Winの関係でいられることが理想的です。

アンケートと調査

広範囲にわたる回答者からの情報を収集するための技法。

観察

別名、「作業観測」とも呼ばれ、実際に置かれている環境において、直接目で見る方法をいいます。
普通はユーザーが自分の作業をしている様子をオブザーバーが外部から観察する方法が行われます。
また、「参加型オブザーバー」と呼ばれる、自らプロセスや手順を体験する方法もあります。

プロトタイプ

期待通りの成果物を構築する前に、その実用モデルを提供することで、フィードバックを早い段階から得る方法。
プロトタイプは、「実用モデル作成」→「ユーザー試作実験」→「フィードバック」→「プロトタイプ改訂」というサイクルを行うため、「段階的詳細化」の考え方が実践されます。
十分にフィードバックのサイクルが機能されていれば、プロトタイプから得られた要求事項は十分に完成されたものになり、設計や製作というフェーズに移行することができます。

アウトプット

要求事項文書

要求事項文書には、要求事項がプロジェクトのビジネス・ニーズをどのように満たすかについて記述します。
要求事項はハイレベルから始まり、情報が増えるにしたがって段階的に詳細化されていきます(段階的詳細化)。
要求事項は明瞭性、追跡可能性、完全性、一貫性といった条件を満たし、かつ主要なステークホルダーに受入れられるものでなければいけません。

要求事項文書を構成する要素には以下のようなものがあります。

  • ビジネス・ニーズや捉えるべき好機
  • 追跡可能なビジネス目標およびプロジェクト目標
  • 機能要件
  • 非機能要件
  • 品質要件
  • 受入れ基準
  • 組織の指針となる原則を表明したビジネスの規則
  • 他のユニット(営業部門や技術グループなど)への影響
  • 母体組織の内外の組織への影響
  • サポートおよびトレーニングの要件
  • 要求事項に関わる前提条件および制約条件

要求事項マネジメント計画書

要求事項マネジメント計画書は、プロジェクトを通して行う要求事項の分析、文書化、マネジメント等のやり方を文書化したものです。

要求事項マネジメント計画書には、以下のような要素で構成されます。

  • 要求事項に関する活動の計画、追跡、報告の方法
  • コンフィグレーション・マネジメントの活動
  • 要求事項の優先順位付けのプロセス
  • 適用する成果物の評価基準およびそれを使用する理由
  • トレーサビリティの仕組み

コンフィグレーション・マネジメントについては、4.5 統合変更管理でも書きましたが、ここでも再掲しておきます。

  • プロダクトやサービス、所産、構成要素における機能的、物理的な特性を特定し文書化する
  • 文書化した成果物に対して変更をコントロールする
  • 変更と実施状況の記録と報告の実施
  • プロダクトやサービス、所産、構成要素に対する監査のサポート

要求事項トレーサビリティ・マトリックス

要求事項トレーサビリティ・マトリックスとは、要求事項をその起点から初めて、プロジェクトのライフサイクルを通して要求事項を追跡することに使う表のこと。
ビジネス目標およびプロジェクト目標に結びつけ、各要求事項がビジネス上の価値を確実に筆源することに役立ちます。
さらに、要求事項をプロジェクトのライフサイクルを通して追跡する手段となるため、要求事項文書で承認された要求事項がプロジェクト完了時点で間違いなく引き渡される助けにもなります。

要求事項トレーサビリティ・マトリックスで追跡する事項は以下の通りです。

  • ビジネスニーズ、好機、目的、目標等に対する要求事項
  • プロジェクト目標に対する要求事項
  • プロジェクト・スコープあるいはWBS要素成果物に対する要求事項
  • 成果物設計に対する要求事項
  • 成果物開発に対する要求事項
  • テスト戦略およびテスト・シナリオに対する要求事項
  • 詳細な要求事項に対するハイレベルな要求事項
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