プロジェクト品質マネジメントは、プロジェクトが取り組むべきニーズを満足するために、品質方針、品質目標、品質に対する責任等を決定する母体組織のプロセスと活動になります。

プロジェクトでは、必要に応じて行われる継続的プロセス改善活動とともに、方針や手順を通して品質マネジメント・システムを実施していきます。

プロセスマップ

  • 計画プロセス群
    • 品質計画
  • 実行プロセス群
    • 品質保証
  • 監視・コントロールプロセス群
    • 品質管理

プロジェクト品質マネジメントでは、プロジェクトのマネジメントと成果物の両方を取り扱います。
プロジェクト品質マネジメントは、成果物の性質にかかわらず、すべてのプロジェクトに適用されるのに対して、成果物の品質の指標や技法は、プロジェクトで生み出される成果物の個々のタイプに固有なものです。

プロジェクト品質マネジメントは、「プロジェクトマネジメントの品質」「成果物の品質」の2つを対象にしています。

品質と等級の考え方

品質と等級は同じではありません。
品質とは、「本来備わっている特性がまとまって、要求事項を満たす度合い」です。
等級とは、「同一の用途を有するが、技術的特性が異なるプロダクトやサービスに定めた区分」です。PMBOKでは等級のことをグレードとも呼んでいます。
品質要求事項を満たすことの出来ない品質のレベルは常に問題になるが、低い等級は問題になるとは限りません。
ソフトウェアを例にとると、高品質で機能制限された低い等級のものは問題になりませんが、低品質で多機能な高い等級のものは問題になりますよね。
プロジェクト・マネジャーはとプロジェクトマネジメント・チームは、要求されるレベルの品質と等級を実現するためのトレードオフをマネジメントする責任を負います。

精密さと正確さの考え方

精密さとは、「繰り返し測定された値が集中していて、ばらつきがほとんどないこと」を意味します。
正確さとは、「測定された値が真の値に非常に近いこと」を意味します。
精密な測定は、必ずしも正確ではありません。逆に非常に正確な測定は、必ずしも精密であるとも限りません。
プロジェクト・マネジャーは、適切なレベルの正確さと精密さを決める必要があります。

近代的な品質マネジメント

近代的な品質マネジメントは、プロジェクトマネジメントを補完しています。品質マネジメントにおいてもプロジェクトマネジメントにおいても、以下の点が重要です。

  • 顧客満足
    顧客の期待を理解し、評価し、明確化し、マネジメントすることにより、顧客の要求事項を満たす必要があります。顧客満足には、要求事項への適合と使用適合性の両方が必要です。
  • 検査よりも予防
    近代的な品質マネジメントの基本理念の1つに、「品質とは計画、設計、作り込みによって達成されるものであり、検査によってではない」という理念があります。一般に欠陥を予防するためのコストは、検査により発見された欠陥を是正するコストに比較すると、はるかに少ないです。
  • 継続的改善
    計画-実行-確認-処置のPDCAサイクルは品質改善の基本です。加えて、TQMやシックスシグマなどのような、母体組織が推進する品質改善運動は、プロジェクトの成果物の品質を改善するとともに、プロジェクトマネジメントの品質も改善します。
  • 経営者の責任
    プロジェクトの成功には、プロジェクト・チームのメンバー全員の参加が必要だが、経営者にはプロジェクト成功のために必要な経営資源を提供する責任があります。
近代的な品質マネジメントの提唱者

PMP試験では、近代的な品質マネジメントの提唱者に関する問題が出題される場合があります。

  • クロスビー(Crosby)※作り手の視点
    • 無欠陥(Zero Defect):欠陥の無いものを最初から正しく作るべき
    • 検査より予防:予防コストは欠陥を是正するコストに比較するとはるかに少ない
  • ジュラン(Juran)※使い手の視点
    • 使用適合性:使い手の真のニーズ(品質要求)を満たした製品を作るべき
    • 品質と等級:等級が低くても受け入れられることがあるが、品質が悪いと通常は受け入れられない
  • デミング(Deming)※マネジメントの視点
    • 品質コストの85%はマネジメントの問題:作業者は自分たちで品質をコントロールできない
    • メンバーに対して受入可能な品質のレベルを示すことが重要。

品質コスト(COQ)

品質コスト(COQ)とは、プロダクトのライフサイクルを通して必要な、品質に関連するすべての作業コストを示します。
プロジェクトにおける決定は、返品、保証に対するクレーム、リコール対策の結果として、その後の運用段階における品質コストに影響を与えます。
つまり、プロジェクトには有期性という特性があることを考慮して、スポンサー組織は外部品質コストを減少させるために、成果物の品質改善、特に欠陥品の予防や評価に投資することを選択します。

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