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7.プロジェクト・コスト・マネジメント

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プロジェクト・コスト・マネジメントは、プロジェクトを承認済みの予算内で完了するために必要なプロセスで構成されています。

プロセスマップ

  • 計画プロセス群
    • コスト見積もり
    • 予算設定
  • 監視・コントロールプロセス群
    • コスト・コントロール

コスト・マネジメント計画書

プロジェクト・コスト・マネジメントで重要なものの1つとして、コスト・マネジメント計画書があります。

コスト・マネジメント計画書は、プロジェクトのコストの様式を定めて、さらに計画、構造化、見積もり、予算化、コントロールのための基準を設定するものになります。

プロジェクト・コスト・マネジメントの3つのプロセスを実行する前に、プロジェクト統合マネジメントエリアのプロジェクトマネジメント計画書作成プロセスで作成します。

コスト・マネジメント計画書作成時の検討事項

  • 有効桁数アクティビティのコスト見積もりは、アクティビティのスコープやプロジェクトの規模に応じてアクティビティ見積りの精度に丸めます。丸めるとは、プロジェクトの大きさによって、10万円とか100万円という単位で丸めるという意味です。
  • 測定単位測定のために使用する単位を定義します。例えば、労働時間数や労働日数など。
  • 組織の手続きとのリンクWBSはコスト・マネジメントの枠組みを提供して、コスト見積りや予算化、コントロールに一貫性を持たせるものです。プロジェクトのコスト管理に使用するWBS要素は「コントロール・アカウント(CA)」と呼ばれます。個々のCAには、母体組織の会計システムで使用している勘定科目のコードと紐付けられます。
  • 管理限界値コスト・パフォーマンスを監視するための差異の限界値を定義します。例えば、コスト・パフォーマンス・ベースラインからの差異の許容範囲を±15%にするなど。
  • パフォーマンス測定の規則パフォーマンス測定のアーンド・バリュー・マネジメント(EVM)を設定します。コストマネジメント計画書には以下の内容を含めます。
    • WBS、コントロール・アカウントとして測定する箇所の定義
    • 採用するアーンド・バリュー測定技法の規定
    • 予定する完成時総コスト見積り(EAC)の予備を決定するためのアーンド・バリュー・マネジメント計算式およびその他の追跡方法の決定
  • 報告形式コストに関する報告の書式や報告頻度を定義します。
  • プロセス記述3つのコスト・マネジメント・プロセスを定義します。

コストの調査と決定

プロジェクト・コスト・マネジメントでの、コストの調査と決定にあたっては、ステークホルダーからの要求事項を考慮する必要があります。

ステークホルダーが異なれば、プロジェクトのコストを算出する方法や時期も異なります。

プロジェクト・コスト・マネジメントが扱う主要な事項

プロジェクト・コスト・マネジメントが扱う主要な事項は、プロジェクト・アクティビティを完了するために必要な資源のコストですが、プロジェクトの終了後に発生するコストに対して、プロジェクトの意思決定が与える影響も考慮する必要があります。

プロジェクトの収益予測

プロジェクトの成果物に見込む収益などのパフォーマンスを予測するには、投資収益率や割引キャッシュフロー、投資回収分析などの、多くの一般的なマネジメント技法を使います。

数学的モデルと利益測定法

プロジェクトの収益予測で使用される、プロジェクト選定手法には以下の2つに分類できます。

  • 数学的モデル制約条件付き最適化法とも呼ばれ、大規模で複雑なプロジェクトの選定で使われる手法です。線形計画法非線形計画法動的計画法整数計画法多重目標計画法を使用します。
  • 利益測定法プロジェクトの選定の際に、一般的に使われる手法です。費用便益分析重み付け得点モデル回収期間法DCFNPVIRREPVなどがあります。

これらの利益測定法については、試験に出題される可能性がありますので、それぞれ解説しておきます。

費用便益分析法

費用便益分析法とは、プロジェクトがもたらす金銭的価値とプロジェクトの導入費用を比較する手法になります。

BCR(Benefit Cost Ratio)やBCA(Benefit Cost Analysis)で表記されます。計算式は以下の通りです。

BCR(%) = Benefit(収入) × 100 / Cost(費用)

BCRが1.o以上であれば、初期投資額を回収できると判断されます。

重み付け得点モデル

重み付け得点モデルとは、プロジェクト選定の際に用いられる評価項目に重み付けをして評価する手法になります。

重み付けした得点の高いプロジェクトが優先されます。

回収期間法

回収期間法とは、プロジェクトで作られた製品がライフサイクル期間で見込める収入に着目して、プロジェクト投資費用を回収するために必要な期間を算出する手法になります。

通常は、回収期間が短いプロジェクトが優先されます。

例えば、プロジェクトの投資費用が20億円で、毎年5000万円の収入が見込まれる場合の回収期間は、

回収期間 = 20億円 / 5000万円 = 4年

回収期間法の問題点としては、貨幣の時間的価値を考慮していないため正確性に欠ける点があります。

DCF(割引キャッシュフロー分析)

DCFは、将来受け取るお金は、現在より貨幣価値が低いという考えに基づいて、将来に受け取る金額を現在の貨幣価値に換算して評価する手法になります。計算式は以下の通りです。

通常は、回収金額を現在価値に換算した金額が、初期投資額を上回っていれば、初期投資額を回収できると判断されます。

PV = FV / (1 + r)n乗

PV:現在価値
FV:将来価値
r:割引率
n:期間

例えば、プロジェクトの投資費用が20億円で、プロジェクトで作られた製品は10年間で40億円の売上が見込まれていて、割引率は年間5%とした場合、

PV = 40億円 / (1 + 0.05)10乗 = 25億円
DCF = PV – 投資額 = 25億円 – 20億円 = 5億円

となり、現在価値が投資額を上回っていると判断できます。

NPV(正味現在価値分析法)

NPVは、将来得られる金額について、期間ごとに現在価値に換算していく手法になります。

DCFに似ていますが、DCFよりも将来価値を厳密に算出できる点がポイントです。

通常は、NPVがゼロ以上であれば、プロジェクトは承認されます。

DCFで記載した例をNPVで算出してみます。

毎年4億円の売上があるとして算出します。

1年目:4億円 / (1 + 0.05)10乗 = 2.5
2年目:4億円 / (1 + 0.05)9乗 = 2.6
3年目:4億円 / (1 + 0.05)8乗 = 2.7
4年目:4億円 / (1 + 0.05)7乗 = 2.8
5年目:4億円 / (1 + 0.05)6乗 = 3.0
6年目:4億円 / (1 + 0.05)5乗 = 3.1
7年目:4億円 / (1 + 0.05)4乗 = 3.3
8年目:4億円 / (1 + 0.05)3乗 = 3.5
9年目:4億円 / (1 + 0.05)2乗 = 3.6
10年目:4億円 / (1 + 0.05)1乗 = 3.8

合計:30.9

NPV = PV – 投資額 = 30.9 – 20 = 10.9億円

となります。

IRR(内部収益率法)

IRRは、将来得られる金額の現在価値と初期投資額が等しくなる利率のことです。

NPVがゼロになる割引率のことをいい、IRRが高い方が望ましいといえます。

EMV(期待金額価格)

EMVは、リスク(不確実性)を考慮したプロジェクト選定手法になります。

通常はデシジョン・ツリー分析と組み合わせて利用されます。

EMVは以下の式で算出することができます。

EMV = (影響を金額で表した価) x 発生確率

例えば、以下の2つのプロジェクトがあり、どちらのプロジェクトを選定するかを考えてみます。

■プロジェクトA

投資額:100億円

  • 発生確率60% → 売上200億円
    EMV = 60億円
  • 発生確率40% → 売上60億円
    EMV = -16億円

EMV = 60 – 16 = 44億円

■プロジェクトB

投資額:80億円

  • 発生確率80% → 売上120億円
    EMV = 32億円
  • 発生確率20% → 売上100億円
    EMV = 4億円

EMV = 32 + 4 = 36億円

以上から、EMVが大きいプロジェクトAが選定されます。

EPV(期待現在価値)

EPVは、EMVと同様にリスク(不確実性)を考慮したプロジェクト選定手法になります。
EMVとの違いは、EPVはNPV(正味現在価値)にリスクを考慮した選定手法である点で、EMVに貨幣の時間的価値を考慮したものになります。
EMVで例示したものに、それぞれ以下のように売上時期と割引率を考慮に入れた場合を考えてみます。

■プロジェクトA

投資額:100億円
売上時期:5年後
割引率:5%

  • 発生確率60% → 売上200億円
    NPV = 200 / (1 + 0.05)5乗 = 157億円
    EPV = (181 – 100) × 0.6 = 34億円
  • 発生確率40% → 売上60億円
    NPV = 60 / (1 + 0.05)5乗 = 47億円
    EPV = (54 – 100) × 0.4 = -21億円

EPV = 32 – 21 = 11億円

■プロジェクトB

投資額:80億円
売上時期:2年後
割引率:5%

  • 発生確率80% → 売上120億円
    NPV = 120 / (1 + 0.05)2乗 = 109億円
    EPV = (109 – 80) × 0.8 = 23億円
  • 発生確率20% → 売上100億円
    NPV = 100 / (1 + 0.05)2乗 = 91億円
    EPV = (91 – 80) × 0.2 = 2億円

以上より、EPV = 23 + 2 = 25億円

以上から、EPVが大きいプロジェクトBが選定されます。

以上がプロジェクト選定手法になります。

数学的モデルと利益測定法には、それぞれどのような選定手法があるのかは、しっかりと押さえておきましょう。

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